コクリコ坂から

面白かった。
宮崎駿の描くようなこの世とあの世、八百万の神のような得体の知れない深淵さもなく、両方に振り切れた異常なほどのロリコン/マザコンを感じさせる描写もない。
その代わりとして若者たちの色気が溢れ返っている。エロスがある。エロい。


音楽が久石譲でなくなったのも大きい。
武部聡志(一青窈のプロデュースが一番有名な仕事のようだ)の音楽が今までのジブリが築き上げてきた縛りをすり抜けつつも作品に馴染んでいる。久石譲がオーケストラとシンセサイザーによるクラシカルな劇伴だったのに対し、武部聡志はジャズやロック(GS)のようなバンドサウンドが入り込んでくる。
しかしそれよりも象徴的で印象に残ったのはたった一音のピアノの音(憶測だがDの音だったはず)だ。他の実写映画やドラマで散々見られる手法だがこれがジブリ作品に用いられるとたちまち見え方が変わってくる。
CM、予告編でも使われているカット、風間が自分の生まれを明かすシーンが予告映像では主題歌によって重点を置いて悲しげな演出なのに対し、本編ではローズピアノによる淡々とした1シーンのような音楽が流れている。この崩しも絶妙に感じられた。


やっとジブリ宮崎駿の手を離れられるかもしれない、という希望による贔屓がずいぶん上乗せされているかもしれないが、それを差し引いても決して悪い作品ではないよえに思う。


あと石原慎太郎、早くこないと手遅れになるぞ。