10 月の多摩川の土手

つまり、世間一般俗に言う狂い咲きひきこもりニートを地で行く人間だった。パソコンに向かい合い、意味もなくありとあらゆるニュースサイトを巡回し、匿名掲示板に入り浸る。趣味は深夜の散歩、子供の頃から熱心なカープファンで赤い野球帽を深く被り、多摩川の土手を毎日散歩した。それは10月の、虫の声が凛と響くよく晴れて冷え込んだ夜だった。背中に36度のぬるま湯を注ぎ込まれ、その後ぬめぬめとした左手で触られるような、感覚が延髄から指先まで波のように伝わった。