銭ゲバという大きなファールボール
銭ゲバ 上 (1) (幻冬舎文庫 し 20-4)
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銭ゲバ 下 (2) (幻冬舎文庫 し 20-5)
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「5円のお金が無いうちもあるのです。」という風太郎の母のセリフが、自分の育ちにおいて全く響かなかったからだ。そこから自分がいかにぬるま湯浸かりのボンボンであるかを実感するのだが。
怨念、情念、執着のような負の感情表現としてもかなりの描写ではあるのだが、黒手塚を読んでいるとさほど衝撃的でもない*1。
一番印象に残ったのは登場人物の中で最も清濁飲み併せた悪人、大学伸一郎が風太郎に真実の愛を語った後、ベッドで一人聖書を読みふける2コマ。「生命の敗北 銭の勝利」と言い放った後、被害者である村人の心を金で買えなかった風太郎、美しい女に失望し、殺しては涙を流す風太郎の姿。
金と愛の境目を妥協できない生き様、美醜による劣等感。この二つのテーマの絡み合ったルサンチマンを描いた名作。
*1:導入部分だけ読んだアシュラは流石に衝撃的だったが