土曜日の夜から雨の六本木

サタデーナイトに六本木に現れ、ミキサー修理代を払い契約書にサインし、六本木ヒルズに迷い込むとそこは巨大なセレブの迷宮、森美術館は閉館し何の目的もなくこのいささかサイバーパンクとでも形容したくなるほどの近未来セレブ空間雨の六本木。五月にしては冷え込む空気に浮かぶ東京タワーはロマンティックであるが残念なことにロマンスの相手は見当たらない。嗚呼、家になんか帰りたくない。大江戸線などという地下の地下の地下に潜り、下り電車に揺られて帰るのがどれだけ惨めで、どれだけ窮屈か。お前に分かるか。大江戸線の階段の段数が、大江戸線の車輌の小ささが。お前に分かるか。
タクシーに揺られて都会の光彩を眺めていたい。たまには隣に適当な美人を乗せて。たまには運転手と孤独な会話を交わし。そうでなければ死んでしまえばいい。