親不知火の話

「麻酔打ちまーす」
あーチクッとすんだよなー。


「続けてもう一本いきまーす」
えーえーえーマジすか。


「軽くあご動かして下さいね。2,3分経ったらまた打ちます。」
まだ打つんすかwwwww

結局5,6本打った気がする。


鉤型のアレで歯茎をグリグリ切り裂かれる。わずかな肉が裂ける音と歯にガチガチぶつかる振動にマゾヒスティックな性的興奮すら覚える。麻酔で全然痛くない。あたしのおにくぅぅぅ!
その後ピンセットだかペンチだかわからない道具でガチガチされる。感覚がないからどうなってるのかわからん。
「やっぱり抜けないのでちょっと割りますね」
ドリル登場。「ドリルは男のロマンだよ!」と「お前のドリルは天を突くドリルだ!」が脳内リピート。始まる土木作業。顎から脳へ、ダイレクトドライブ、あと嫌ーな音。
また何かピンセットのようなもので何度もガタガタやってると思ってたらいつの間にか終わる。
歯茎を縫う。4針くらい縫う。意外と時間がかかる。
外科医「針見えます?」
助手「見えません」
ちょwwwww
思わず目を開ける。
外科医「はい目ぇ閉じてて下さいねー」


何が一番生々しく痛かったかといえば麻酔のかかってない右唇に糸引っ掛けられたことです。


いつが一番辛いかといえば病人を出て麻酔が切れてから今が現在進行形で辛いよ。そりゃイギリスの若者もエクスタシーやめて麻酔にハマるよ。
「大丈夫かリトルジョン!」
「衛生兵!衛生兵!」
「俺…まだ死にたくないよ…」
「喋るんじゃないリトルジョン!ほら、モルヒネを打ったから大丈夫だ!お前は死なない!」
「母さん…母さーん…母さんに会いたいよ…」
「しっかりしろリトルジョン!大丈夫だ!おい!……………死んじまったか…」
「…事切れました」
「畜生…こんな戦争にどんな意味があるってんだ…」