司馬遼太郎 - 国盗り物語 読了

国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉 (新潮文庫)
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国盗り物語〈2〉斎藤道三〈後編〉 (新潮文庫)
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国盗り物語〈第3巻〉織田信長〈前編〉 (新潮文庫)
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国盗り物語〈第4巻〉織田信長〈後編〉 (新潮文庫)
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学生時代、司馬遼太郎の本なぞ一冊も触れたことがなかった。純文学こそが至高であり、歴史への興味もなく、そして何より文学より音楽が大事だったからだ。
ふたばの横山光輝三国志コラから横山三国志を読み、吉川英治三国志コーエー三国志、横山版項羽と劉邦史記(春秋戦国)、諸子百家、三国無双シリーズなどをつらつらと適当にここ数年漁っているのだが、大雑把な中国の戦国時代の歴史がつかめてきたのでそろそろ日本の戦国時代にも手を出す頃合いだろうと(戦国コレクションやら織田信奈の野望やら今更何をとでもいうように萌えヲタ向け戦国モノも増えているので)見事時代に流されるように手に取りましたがこちらの本。


やはり斎藤道三編が面白かった。近年の研究によると美濃の国盗りは長井新左衛門尉と斎藤道三の親子二代によるものと見られているらしいが、それだけの所業を道三一人でやってのけ、前半生は不明な点も多いため講談のようにフィクショナルな脚色がなされてとても躍動感があり、数珠丸恒次の贋作が脚色された物語を象徴するかのように気持ち良い切り口で進んでゆく。道三の日蓮宗の思想でありながら、神も仏も自分に利用されるものに過ぎないという傲慢な合理的宗教観によって力強く、テンポ良く国盗りが行われていく様はまさに痛快であった。
それと比べると後半織田信長編は主人公にあたる織田信長明智光秀の出自がしっかりしているせいか、大胆な脚色もできず、この二人の人生を文庫二冊にまとめるにはまた濃すぎてずいぶんと急ぎ足になってしまう部分もある。
そしてなにより物語のほとんどが明智光秀の目線による保守的で真面目で精細で気の細い、旧来的な価値観を重んじる教養主義の空気に支配されており、読んでいて堅苦しく、司馬の描く光秀に激しい同族嫌悪を覚えてページをめくる手が随分と重くなった。もはや小説の問題でなく自信の問題なのであるが。志大才疎で教養主義である様、足りないものが才ではなく器である点など、もう読んでいて辛い。辛かった。わー辛い。


次は新史太閤記あたりに手を付けようかと。