津雲振り向くに、漆黒の闇が広がり、月明かりと近代のドーナツ化現象によるマンションの街灯中途半端に明るく照らしていた。そこには狐も浮浪者もジェイソンもいなかった。塗り込めた闇が、闇を、塗り込める。津雲はウツムキナガラ、き、気持ち悪いと小声でつぶやき、その言葉も吸い込まれ、塗り込まれ、たちまち心の輪郭振動、土手を走り、靴紐を踏み、転び、立ち上がり、走り、こんなことなら回転寿司でえんがわを腹一杯食っておけばとわけのわからぬファンシー走馬灯。浮かび上がり、大気圏で燃え尽きる。